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夢のなかの小径

いくら考えてもわからなかった

ぼくの左手は重たいスーツケースの取っ手を握っていた。

一刻も早くその場から立ち去りたい気持ちと、電車に乗ってやってくる人を迎えなければならないのではないかという義務感がなかばして、スーツケースを引く手が重くなる。

スーツケースの中身は本だ。もう読んでしまって開くこともない本がいっぱいに詰まっていて、道の凹凸を踏んではゴトゴトなった。

駅前を背にして、誰もいない道を町中に向かって歩いて行こうとしていたぼくは、その場に立ち尽くして、うなだれてしまった。

もう電車が駅に着いてしまったら、ぼくはそこから離れられないだろう。

その場を立ち去るなつもりがあるなら、この一瞬が決断の最後のチャンスだ。

それにしてもどうしてぼくはここにいて、こんな切羽詰まった事態に陥ってしまったのだろう。

いくら考えてもわからなかった。



by ourfolks | 2018-10-04 23:28

夢のような話の世界に誘う語り
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