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夢のなかの小径

駅舎の見える道

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冬でもその光景は心に温かい。

駅があり、そこから一本の大通りが町のはずれまで続いている。

大通りといっても、静かな、車も人の影もないゴーストタウンのメーンストリートだ。

これは夢のなかの光景だが、この町はほんとうにぼくが育った町だ。

実際この町は、昼でも、たった一台のクルマも見かけない時間が長く続くことがある。

でもさみしくはない。

ぼくの記憶のなかに残っている昭和30年代の活気あるざわめきがまだあたりに漂っていて、そこに戻ろうとすればいつでも戻れるからだ。

ぼくはアヘン中毒者のようにひとり静かに微笑んで、目を閉じる。

ほんとうは眠っているのだから、目ははじめから閉じているはずだが。

ぼくは何かを味わうように目を閉じ、また目を開けて、駅のほうを振り返った。

なにか恐ろしいものが列車でやってくると先ほどまでは思っていたのに、ぼくはふと、懐かしい人々が乗っているのかもしれないと考えている。

それは死者たちだ。



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# by ourfolks | 2018-11-10 10:44

ジンと眠り

この夢を見た眠りはそこで覚めてしまった。

ぼくは寝返りを打って時間を確かめ、もう一度眠ってさっきの夢のなかに戻るかどうかを考えた。深夜3時の少し前のことだ。

ストーリーは結末まで知らないと気が済まないのかもしれない。クイズの答えを知らずにクイズを忘れてしまうことができないのだ。

しかし同じ夢のなかに戻れる保証はない。

そういうときはなりゆきにまかせて、あとは忘れることだ。

それはぼくの人生における教訓でもある。流儀というか。

ぼくはキッチンまで行って冷凍庫からジンを取り出し、手当たりしだいのコップに注いで口に放り込んだ。

それがもう一度眠るための儀式だ。胃からあたたかい刺激が広がるのに意識を集中していると、落ちるように眠りに戻れる。

どのぐらいの時間がかかったかは知らないが、ぼくはまた元の夢のなかに戻った。







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# by ourfolks | 2018-10-13 13:22

いくら考えてもわからなかった

ぼくの左手は重たいスーツケースの取っ手を握っていた。

一刻も早くその場から立ち去りたい気持ちと、電車に乗ってやってくる人を迎えなければならないのではないかという義務感がなかばして、スーツケースを引く手が重くなる。

スーツケースの中身は本だ。もう読んでしまって開くこともない本がいっぱいに詰まっていて、道の凹凸を踏んではゴトゴトなった。

駅前を背にして、誰もいない道を町中に向かって歩いて行こうとしていたぼくは、その場に立ち尽くして、うなだれてしまった。

もう電車が駅に着いてしまったら、ぼくはそこから離れられないだろう。

その場を立ち去るなつもりがあるなら、この一瞬が決断の最後のチャンスだ。

それにしてもどうしてぼくはここにいて、こんな切羽詰まった事態に陥ってしまったのだろう。

いくら考えてもわからなかった。



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# by ourfolks | 2018-10-04 23:28

夢のような話の世界に誘う語り
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