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夢のなかの小径

疾走するシトロエン

これはタクシーなのだろうか?

クルマはシトロエンDSだ。リムジン仕様かもしれない。

ぼくは濡れたように輝くDSのボディーに指の腹で触れてみた。

そして吸い込まれるように身をかがめてバックシートにもぐりこむとドアを閉めた。

と、考える間もなくクルマは走り出す。

スーツケースはどうしたろう? と一瞬思ったが、このまま捨てていこうとぼくは考え直す。

ぼくは頭を上げ、フロントガラス越しの風景を見ようとした。

運転手の肩が見える。ハンドルを握る手には迷いもなくクルマはどこかへ向かって走っていく。

どこへ?

どこに行くにしても、これは夢のなかの出来事だから、なりゆきにまかせてしまうしかないとぼくは思う。なぜならぼくは眠っていて、自分の意思では何ひとつできることなどないからだ。





# by ourfolks | 2018-11-29 12:06

黒いフランス車

駅まで引き返して、懐かしい死者たちを出迎えるかどうかを考える。

そのとき閃いたのは、ぼくの性格的な弱点のことだった。

もう死者たちのことは忘れていいのに、ぼくはずっと思い出に縛られたまま、未来に進めないということだ。

何か十分報いることができなかった、応えることができなかった、そういう思い出を気に病んでしまうのだ。

だから駅に戻ることは、過去へ戻ることだ、そう思った。

ぼくは自分の足音を確かめながら、前へ歩き出す。

すると黒い、流れるようなシルエットを持った大型の自動車が、ぼくの目の前でタクシーのように後ろのドアを開いて待っているのに気づいた。

フランス車のようだ。ベージュの柔らかそうなシートと、ドアの内側のパネルに輝く銀色の回転ノブが、この小さな田舎町には不釣り合いなほど高級そうに見えた。

# by ourfolks | 2018-11-24 11:16

駅舎の見える道

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冬でもその光景は心に温かい。

駅があり、そこから一本の大通りが町のはずれまで続いている。

大通りといっても、静かな、車も人の影もないゴーストタウンのメーンストリートだ。

これは夢のなかの光景だが、この町はほんとうにぼくが育った町だ。

実際この町は、昼でも、たった一台のクルマも見かけない時間が長く続くことがある。

でもさみしくはない。

ぼくの記憶のなかに残っている昭和30年代の活気あるざわめきがまだあたりに漂っていて、そこに戻ろうとすればいつでも戻れるからだ。

ぼくはアヘン中毒者のようにひとり静かに微笑んで、目を閉じる。

ほんとうは眠っているのだから、目ははじめから閉じているはずだが。

ぼくは何かを味わうように目を閉じ、また目を開けて、駅のほうを振り返った。

なにか恐ろしいものが列車でやってくると先ほどまでは思っていたのに、ぼくはふと、懐かしい人々が乗っているのかもしれないと考えている。

それは死者たちだ。



# by ourfolks | 2018-11-10 10:44

夢のような話の世界に誘う語り
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